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教育の社会史

出版社:知泉書館
出版日:2006年12月
ISBN10:4901654888
ISBN13:9784901654883
販売価格:3,520円
中世以降のヨーロッパにおける民衆教育の研究に関しては、識字率への関心が強かったが、キリスト教を背景としたヨーロッパ社会では、宗教教育が教育のあり方に深く関わっていた。中世初期では修道院と宮廷がラテン語をはじめとした貴族階級への教養教育の役を担い、中期にはエリート教育機関としての大学が誕生する。近世に入り、聖書を母国語で読みたいという欲求の高まりや、都市の急速な発達と商工業の繁栄によって、読み書き計算などの初等教育への要請も高まった。その中でユダヤ人社会ではキリスト教社会に先駆けて初等教育を義務化したが、これは民族のアイデンティティー保持のためでもあった。東ローマ帝国の滅亡、そして教会や修道院からギリシャの古典文献が再発見されたルネサンス期には、人文主義が西欧各地へ拡大し、古典重視の教育観を促した。プロイセンとオーストリアの民衆教育への取り組みは、宗教的状況に影響を受けつつも、国家に有益な臣民の育成を目的として展開する。イギリスの工業化による貧困層の増大と教育のあり方や、フランスでのルソーの教育理念が強い衝撃を与えるなど、各国の社会状況が公教育制度の形成過程で顕著な特徴となる。また社会の変化は貴族にも新たな教育の形を生み出した。本書の執筆者は必ずしも教育史の専門家ではないが、一次史料を扱うなかで教育史関係の史料と出合い、それを活用して、エリートと民衆、男性と女性、市民と農民の違いなどさまざまな切り口で、ヨーロッパ中近世教育の多面的な姿を明らかにした。
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