戦後変格派・山田風太郎

怪奇・幻想・エロ・猟奇・SF的要素などの作品の奇想、風太郎自身の敗戦の記憶や死生観・ニヒリズム、敗戦から高度成長へという時代状況の3つの視点から『忍法帖』などの作品を読み、「戦中派・風太郎」をジャンルを超えた「戦後変格派」として復権させる。 はじめにーー「変格」とは何か？ 第1章　戦後変格派・山田風太郎の教養ーー奇想の源泉 　1　書物への耽溺と探偵文壇デビュー 　2　戦後変格派の出発点ーー「雪女」の構造 　3　「黄色い下宿人」--誰も考えつかなかった対決図 　4　『文学論』的探偵小説批判ーー「How」より「Why」を 　5　「伊賀の散歩者」--乱歩を書く、その「懐かしさ」を甦らせるために 第2章　滅失の神話ーー〈風太郎敗戦小説〉考 　1　〈神〉とともに生きた日々--戦争と青春 　2　神の喪失と「人間の憤怒」--何が「陸奥」を沈めたのか 　3　〈聖母〉の誕生と〈神〉への殺意ーー愛されなくても、愛する 第3章　『太陽黒点』論ーー最後の〈敗戦小説〉 　1　突然変異と暴走する若者たち 　2　歴史から截断された青春 　3　神話の終焉、殺意の胚胎 第4章　「風太郎忍法帖」という歴史 　1　「風太郎忍法帖」の特殊性ーー二重の歴史性 　2　『魔界転生』--歴史の蹂躙 　3　忍者と戦争、忍法と敗戦 　4　「あれは、何であったのか？」--「地球的大忍法」の正体 第5章　戦後変格派の医学的・科学的奇想ーー性的科学小説からタイムトラベルまで 　1　風太郎性的科学小説論 　2　医学的猟奇小説論ーー生と死の境をめがけてーー「人間華」の凄絶 　3　堕胎医探偵・荊木歓喜 　4　反科学・反近代の闘争劇ーー春画は軍国を滅ぼし、忍法は軍艦を沈める 　5　風太郎最後のSF（？）--文化系タイムマシーン、二百五十年の時空を翔ぶ 第6章　風太郎文学とキリスト教 　1　生むなかれ、繁殖（ルビ：ふゆ）るなかれーー「ウサスラーマの錠」と産児制限 　2　神をもおそれぬパロディーー「ウサスラーマの錠」から「満員島」へ 　3　聖と性ーー〈聖なる淫売婦〉の物語 第7章　風太郎の「近代的怪談」--最後の戦場 　1　「厠」がつなぐ物語構造 　2　宣戦布告のある戦い 　3　忍者対忍者、弱者の戦略 　4　塗戸漢学、最後の戦場 第8章　風太郎文学における闇の論理ーー愛の亡霊・悖徳の聖者たち 　1　幽霊は時代に抗うーー『幻燈辻馬車』 　2　宗教的奇蹟か、「ゆうれい」かーー『明治十手架』 　3　「闇」のキリスト、監獄のイエスーー『地の果ての獄』 あとがきーー山田風太郎は生きている