深淵の旅人たち

作家たちの「旅」からイギリスを読む。 大都市ロンドンがゴシック小説を生んだ。 伝統と常識への反発が新しい悲喜劇を作り出した。 深い塹壕と泥沼の戦場が、絶望と希望をあわせもつ小説の誕生の場となった。 ーー人々が不安と焦燥感にかられた一九世紀後半から第一次世界大戦までのイギリスを、ブラム・ストーカー、スティーヴンソン、オスカー・ワイルド、フォード・マドックス・フォードなどの作家たちの「旅」から読み解く。 はじめに 第I部　一九世紀末イギリスのゴシック・ワールド 一九世紀末の英国の危機意識と文学ーーブラム・ストーカーとオスカー・ワイルドを中心にーー 境界の破壊者としての吸血鬼ーーブラム・ストーカーの『ドラキュラ』を読むーー 一九世紀末ロンドンの旅人たちーー旅行記としてのゴシック小説を読むーー 第II部　危うい旅人、オスカー・ワイルド 『獄中記』再考ーー深淵におけるワイルドの思想ーー 旅する女たちーーワイルド劇の女主人公における「自己形成」についてーー オスカー・ワイルドと悲喜劇ーーワイルドの未完成の演劇作品についてーー 旅の子供たちーーオスカー・ワイルドの童話の世界ーー 第III部　第一次世界大戦とフォード・マドックス・フォード 『善良なる兵士』を読むーーレオノーラ・アッシュバーナムの戦いーー フォード文学の揺らぎーー『電話 ふたつのパッションの物語』を読むーー 再生物語としての「第一次世界大戦」--フォード・マドックス・フォードの『敵にあらざれば』を読むーー あとがき 文献案内 図版出典一覧 索引