化石の研究法

この本は1971年刊行の『化石の研究法』をひきついでいるが、内容はすべて一新され、書き改められている。化石の形成機構・化石の微細構造・硬組織の系統進化・古生態、コンピュータを用いたシミュレーションや系統分類、古生化学から分子生命科学へなど、近代的な機器の開発とそれらの導入によって、新しい古生物学の分野が開拓され、日本における古生物の研究のなかに定着しつつある。 　このような研究の進展にともない、旧書の内容を書き改め、改訂版をつくることの必要性が提案され、全面的に書き換えられた新しい解説書として刊行される運びになった。 　古生物の研究においては、第一に現生生物に精通することにはじまり、その研究の手法をつぶさに知ることが必要である。第二は地質学の知識を野外での実践を通して充分に身につけ、化石の研究に向かうことであろう。生物学および地質学の知識については、それぞれの解説書・専門書を開いていただくことにして、この本では、第I部において化石の研究全般に共通で一般的な方法を解説し、第II部以降で具体的な手法を解説している。 　この本は地球にかつて生存した古生物の遺体・遺跡である化石の研究や教育にたずさわる学生や研究者、さらに地球上に30億年以上、生存しつづけている生物の歴史に感心のある化石愛好者にとって、かっこうな研究手法の手引き書として執筆された。くわえてこの本をきっかけに新しい古生物学の担い手が育っていくように、という願いもこめられている。また、小学校や中学校・高等学校で化石を扱う教師の手引き書としても活用できるものと信じている。