伏流する物語ー田山花袋の小説を読む

田山花袋、変奏されるテーマ、伏流する物語 田山花袋とは何者であったのか？一つのテーマに収斂せず、複数のテーマが、繰り返し顕在化する。伏流する物語は通奏低音として響き渡っていく。 花袋文学の軌跡。花袋文学の最大のテーマは男女の恋愛である。ヒロイン像は時代とともに変化するが、彼女らは恋愛の純粋性を主張し、新たな物語の地平を切り開く。そして親子・兄弟の物語は時に愛の物語を圧縮し、変形させていく…。新しい視点から、花袋の小説群を読み替えた一作。 はじめに 1　ロマンティシズムから自然主義へ 田山花袋ー「文学」を巡る葛藤 『断流』とその周辺 『重右衛門の最後』-「語り」の空白が生み出すもの 『重右衛門の最後』-葛藤する作品世界 2　自然主義文学の時代 『蒲団』再読ー横山芳子を中心に 『田舎教師』とその時代 明治三十年代の「女中」像ー『家婢』『胡瓜』を中心に 『ある朝』-『蒲団』との比較を通して 『一兵卒の銃殺』-主人公はなぜ死なねばならなかったのか 3　大正ロマンと田山花袋 『渦』-不幸な男女の物語 『残る花』-お粂を取り巻くもの 『鈴子の恋』-匿名化する男達 『弓子』-ヒロインの死をめぐって 『曠野の恋』-「新しい女」と「満州」と 印旛沼を巡る物語ー『水あほひ』を中心に 4　歴史小説のヒロインたち 『通盛の妻』-理想化された男女の愛 闇に消えた「孤舟」の運命ー静御前の悲劇を中心に 初出一覧 あとがき 人名索引