山の手「成城」の社会史

東京郊外にある高級住宅街・学園都市として有名な成城はどのようにできあがり、そこにはどのような文化が生起したのか。都市計画や産業の諸相、映画や文化人とのつながり、人々の生活実態を浮き彫りにして日本社会のミドルクラスとモダニズムの関係に迫る。 序　章　成城という空間と生きられた近代　新倉貴仁 　1　問題の所在ーー生きられたモダニズム 　2　成城という空間 　3　文化都市ーーミドルクラスと文化と郊外 　4　「機械」の文化ーー戦前日本の大衆文化　 　5　「機械」の時代（machine age）--戦前アメリカの大衆文化 　6　大量生産技術とモダニズム 　7　近代の経験と方法ーーグローバルでローカルな経験と痕跡 第1部　住まいとしての成城 第1章　横溝正史の定住と移動ーー探偵小説のトポロジーを考える　内田隆三 　1　デカルトの漂泊／カントの定住 　2　確実性の希求／実用性の確保 　3　探偵小説と真実のゲーム 　4　密室空間と無差別な視線 　5　横溝正史の移動と定住 　6　横溝正史と見晴らしのよい空間 　7　空間の作法を考える 第2章　建築家が帰る場所ーー丹下健三と成城のまち　磯 達雄 　1　建築家・丹下健三 　2　丹下健三と成城との関わり 　3　丹下自邸の敷地ーー築山を設けた庭 　4　丹下自邸の建築的特徴1--ピロティ 　5　丹下自邸の建築的特徴2--日本の伝統とモダニズムの統合 　6　丹下自邸の建築的特徴3--コアシステムと無限定空間 　7　丹下自邸での日常生活 　8　サロンやショウルームとして 　9　成城にあるもう一つの作品ーーゆかり文化幼稚園 第3章　成城と映画ーー“世界のミフネ”を生んだ街・成城　高田雅彦 　1　成城は、わが国初の本格的な学園町にして、映画の街 　2　俳優・三船敏郎を生んだ街・成城 　3　三船敏郎の成城ライフ 第2部　都市・住宅・近代 第4章　教育する家族の生活と教育ーー成城を事例として　岩田一正 　1　配慮すべき存在としての子どもの発見 　2　住宅政策と子ども 　3　成城という学園都市ーー朝日住宅展覧会から見えてくるもの 第5章　なぜモダニズム建築にして都市計画なのか　北山研二 　1　日本の本格的なモダニズム建築とは何か 　2　なぜル・コルビュジエはモダニズム建築の創始者といわれるのか 　3　ル・コルビュジエの日本の弟子たちは何をしたのか 　4　ル・コルビュジエ的でありながら、超ル・コルビュジエ的とは 　5　建築は孤立せず、環境を取り込み、新しい環境を作り出す 　6　成城は、モダニズム建築を受容して、都市計画を活用したのか 第6章　都市の住まいとまちなみーー「成城」を通して考える　山本理奈 　1　都市の住まいと現在の状況 　2　これからの住まいと論点 　3　成城とまちなみのゆくえ