経験の流れとよどみ

純粋経験とは何か。 見落とされがちな方法論に着目し、錯綜するテクストを丹念に読み解くことで、ジェイムズ宇宙論の核心を明瞭に描き出す。 ・・・本書において示されるジェイムズの宇宙論は、世界の実相を純粋経験として提示するものである。私たちが住まうこの世界はどのように流れ、どのようによどむのか。ジェイムズの議論をとおして、そのことを見極めてみたい。（「序」より） 序 第1章　意識経験の統一性と複数性ーー『心理学原理』における意識論と自己論の調停 第1節　意識の流れの統一性ーー『原理』第九章を中心に 第2節　自己論における経験の複数性と『原理』に含まれる対立 　　　　--『原理』第一〇章を中心に 第3節　自己論の批判的検討 第4節　対立と批判の解消ーー意識経験を捉える二つの視点 第2章　純粋経験の多様な見方ーー統一的理解の試み 第1節　純粋経験に関する諸解釈の分類と本書の立場 第2節　世界の素材としての純粋経験ーー存在論的な純粋さ 第3節　素材としての純粋経験における主体の発生  第4節　純粋経験の与えられ方ーー認識論的な純粋論 第3章　ジェイムズ哲学における関係の概念ーーF・H・ブラッドリーとの論争をとおして 第1節　ブラッドリーによる関係批判 第2節　『徹底した経験論論集』における関係の擁護 第3節　「ミラーーボードの反論」における「論理」の放棄への道 第4節　ジェイムズが捨てた「論理」とは何か 第4章　ジェイムズ哲学の方法論 -- 世界への多角的アプローチ 第1節　ジェイムズの哲学観ーーヴィジョンとしての哲学 第2節　多角的パースペクティヴと調停的態度 第3節　可塑的な宇宙の自己表現としての哲学 第4節　経験を語る視点の存在 -- 宇宙自身の思考とそこから生成する個人 第5節　ジェイムズ哲学の方法論と宇宙論との相互補完関係   第5章　ジェイムズ宇宙論における信じる意志の合理性 第1節　気質と合理性の感情 第2節　気質によって選ばれるヴィジョンーー哲学の系統図を巡って 第3節　信じる意志と哲学の系統図 第4節　選択の検証とジェイムズ宇宙論   結論　ジェイムズ哲学の多角的理解に向けて