ことばの気流

日本の社会言語学を先導してきた著者が、自らの研究観や生活観をめぐって書き記した近年の随想を纏めた一書。各所に鋭い時代感覚がちりばめられている。 ❶ 私の研究観 〈個〉への視座／古いものはすべて良いもの？／「ピジン」と「クレオール」　／規範と疎外／個別性への気づき／〈ゆらぎ〉を感知する／70 年周期 ❷ 70 歳からの再生 ラッキーセブン／シンプルライフ／赤目四十八滝／台湾にて／湾生たちの想い／韓国にて／日常を再生する ❸ 東京時光 ひぐらしの里へ／三河島／紫陽花／谷中霊園／根岸の子規庵／帝国湯ー昭和情緒／池袋駅西口／さいたまゴールド・シアター／六本木／谷根千鷗外の『青年』を読む／下谷龍泉町の樋口一葉／流星の如く／斎藤緑雨について／三ノ輪の浄閑寺／山吹伝説／心柱制振／「夕焼け小焼けで日が暮れて」／「小焼け」とは？／湿潤と乾燥／「北暗ければ望郷ならず」／NAS とSAN／「一期は夢よ」／君の夢は？／銀座で思ったこと／円朝の噺と湯島天神／運転免許証／クライシス（危機）／東京五輪 ❹ ことば〈運用〉の背後 愛心愛語／無垢な感性／ほんとうのこと／語のエネルギー革命／泰雅の飛魚ー「宜蘭クレオール」／迷跡（MICI）／ことばと差別／「女性」を表す言い方／「無敬語」について／敬語は美しいのかー日本語の相対化／五箇山の「ヤル」敬語をめぐって／屋敷林の名称「カイニョ」の由来／「さなだ（真田）」の語源／漢語仕立ての翻訳語／「東京」の読み方の変遷／「スコップ」と「シャベル」-ことばの移動／「あいな」と「あいよ」／「酸味がございますね」／言語の媒体ーイラスト・手話／東の「タヌキ」／大きい「お」と小さい「を」／海上の道ー「方言周圏論」の蹉跌／風土論について／「家」制度と個人主義／「音階」とアクセント／言語観の共有ー五箇山と雫石／北上盆地ー啄木の歌／最期の問い ❺ 五箇山情景 雪の華／ノアの箱舟／雪虫／淡紅の山肌　不思議なバージニティー／栃の葉天狗／「幾万の人の逝きたるあくる日ぞ」／青い山脈 ❻ 追憶 越前水仙／清明の候／伯父のこと／富山大空襲／戦後75 年／北の国から／人間教育・反戦教育／投票の意味／白糸の郷／城端／藤田君との邂逅／宝永噴火／木の芽どき／時代情況をファイリングする ❼ 希望 「ここに地果て、海始まる」 謝辞