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出版社:岩崎学術出版社
出版日:2015年03月
ISBN10:4753310892
ISBN13:9784753310890
販売価格:3,080円
●「心理士と他職種との結びつき」を主テーマに,心理的問題が複雑に,そして多様化する中,臨床心理士として,他職種の専門家たちとどのように協働し,システムを構築しているのか,臨床心理士が他職種の専門家と連携する際に,良好な協働関係を築き,お互いの専門性を尊重しつつ,効果的な支援体制を構築するためには,具体的にはどうしたら良いのか?クライエントのこころを,援助者である専門職の間でつないでいくためには,どのような点に心掛け,何に配慮すべきなのか?他職種とは異なる心理士独自の役割とは,どのようなものであるべきなのか?人のこころを扱う心理士だからこその心理臨床活動における他職種との協働(コラボレーション)について論じる。
●目次
序文
はじめに
第1章 多職種支援における心理士の役割ー心理士独自の貢献とは
第2章 周産期医療における多職種協働
第3章 出産後の家族への支援ー母子保健領域での保健師との協働
第4章 幼児期の子どもへの支援ー巡回指導における保育士との連携
第5章 発達障がい児への支援ー地域支援におけるネットワークの構築
第6章 発達専門機関でのチーム医療の実際ー幼児期から児童期の子どもへの支援
第7章 スクールカウンセリングにおける支援ー養護教諭や担任との連携
第8章 スクールカウンセリングにおける支援ー管理職との連携
第9章 学生相談における支援ー学内外の支援者との連携
第10章 医療・保健領域における心理士への期待ー児童精神科医の立場から
第11章 チーム医療での連携と協働
第12章 家族との連携
●近年,心理臨床の場は,大きく広がりを見せるようになってきています。精神科医療だけではなく,医療の様々な領域において臨床心理士が活躍するようになり,スクールカウンセラーなどの学校領域,児童福祉施設や,発達センターなどの福祉領域,職場のメンタルヘルスをあつかう産業領域,家庭裁判所や非行などにかかわる司法・矯正領域,それ以外にも被害者支援や自死遺族の支援など多岐にわたるようになってきました。その背景には,社会の中で,こころの健康をいかに保つかということが,これまでになく強く認識されるようになり,「こころのケア」が日々の生活の中でも求められるようになったということがあるでしょう。臨床心理学の領域でもクライエントが抱える心理的問題に,多数の背景要因が複雑に関与しており,臨床心理士だけでクライエントに対する支援活動を行っていたのでは,十分な貢献を果たすことが難しいということが共有されるようになっています。日々の心理臨床では,クライエントの利益を第一に考慮して,お互いの専門性を尊重した上で,心理職以外の専門職と連携することは特段珍しいことではなく,むしろ一般的になっているでしょう。このように専門性の違う領域と連携をして活動をすることが求められるようになってきましたが,多職種で連携をして活動をする際に,臨床心理学という専門性をどう生かすことができるのか,これまで十分な検討はされてきていなかったのではないかと思います。私たちの活動の場が,広がりを見せていったとしても,その根底に流れるのは,臨床心理学がこれまで大事に扱ってきた1対1 の面接が基本となってくることは変わりありません。出会いかかわることを通して,心の問題にとりくむプロセスの対象が,特定の一人の人ではなく,複数となり,場全体となってきたということもできるでしょう。他職種や他領域との連携が進んできたからこそ,あらためて問われるのは,「心理臨床の専門性は何か?」であるといっても過言ではないのではないでしょうか。(「はじめに」より)
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