王権のコスモロジー

王権の力学から王権の詩学へ！ 「王権」というテーマをめぐり、日本史・東洋史・西洋史の研究者が討議を重ねて書き下ろした、必読の力作論考11篇。 各地域・各時代の王権をめぐる現象への「権力の詩学」（王位継承法・儀礼・神話・宗教・宮廷・王都など王権の正統性やコスモロジーを問題とする王権論）と「権力の力学」（国家における王権）という魅力的な観点からの力強いアプローチ。比較歴史学の手法で考察し、同時に通史としても読める構成となっている。 序（水林 彪） I 天皇と将軍─神話と儀礼 1．律令天皇制の神話的コスモロジー（水林 彪） ◇初期宣命および『古事記』の天皇像 はじめに 一 「天皇が御子のアレ坐さムいや継々ニ大八嶋国知らさむ次」 二 「天つ日嗣」・「天ツ神の御子」・「天に坐す神の依シ」 1 「天つ日嗣」 2 「天ツ神の御子」 3 「天に坐す神の依シ」 第一詔「依シ」と『古事記』「言依し」の関係を めぐる研究史 「命」論 三 「現御神」 1 「人」たる「神」 「神」たる「人」 2 「現」なる「神」 3 「御神」 結びにかえて─「倭根子天皇」観念 2．朝廷・幕府体制の成立と構造（河内 祥輔） はじめに 一 朝廷・幕府体制の成立過程 1 朝廷の中世的変容 膨張する朝廷 平安時代の朝廷 院政と家格秩序 2 天皇と武士の結合 保元・平治の乱の特徴 保元の乱直前の情況 合戦突入の経過 後白河の天皇としての性格 武士のアイデンティティー 3 武士の組織化 後白河「院政」の成立 貴族としての平家 武士の組織者としての平家 4 1180年代内乱 二 鎌倉幕府における「頼朝の秩序」 1 御家人の規準 御家人制の特徴 頼朝時代の意義 御家人認定の規準 御家人交名と御家人役 下文の場合 御家人制の性格 2 得宗体制の正統性 首脳部を支える合意 幕府首脳部の起源 評定衆の資格 挙兵の名誉 右大将家法華堂 得宗の地位の根拠 3 まとめ おわりに 3．徳川王権の成立と東アジア世界（山本 博文） はじめに─秀吉の環東アジア帝国構想 一 東国の王と京都の王 1 儀礼に見る王権の所在 2 将軍王権のイデオロギー 3 朝廷における君主意識の保持 二 将軍王権の基盤 1 将軍王権の自己認識 2 徳川王権の基盤 三 徳川王権の世界認識 1 家康の対外政策と日本型華夷意識 2 家光の対外観と対外政策 3 天皇の官位叙任権と大政委任論 おわりに─対外的危機と徳川王権の崩壊 4．日本近代都市とその象徴 ◇「京都」と明治神宮（小路田泰直） はじめに 一 日本的都市とアジア主義 1 岡倉天心の思想 2 「東洋民主主義」の発見 二 象徴としての京都の特権化 三 都市問題と明治神宮の建設 おわりに II 中国皇帝の権威と祭祀 1．成周王朝の君主とその位相 ◇豊かさと安寧（豊田 久） はじめに 一 「天命の膺受」と「受民、受疆土」 1 「受民」と多民族について 2 「受疆土」と経済的富の生産について 二 「四方の匍有」と国際的な安寧 1 「四方」（四国）と国際的紛争の収束について 2 「四方」の中心「中国」（洛邑）と「帝廷」天宮について 三 成周王朝の君位継承儀礼 おわりに 2．漢唐間における皇帝祭祀の推移 ◇国家と祭祀（金子 修一） はじめに 一 皇帝祭祀の形成 二 魏晋南北朝の郊祀宗廟の祭祀 三 北朝の郊祀宗廟の祭祀 四 南北朝皇帝祭祀の特質 3．清朝の支配権と典礼（石橋 崇雄） ◇特に清初前期におけるハン権・皇帝権と即位儀礼・祭天典礼の 問題を中心として はじめに 一 清朝の位置付け─清朝の支配構造と清初前期の動向 二 清初前期におけるハン権と皇帝権 三 ホン＝タイジの大清皇帝即位における即位儀礼と祭天典礼 おわりに 4．帝国の宇宙論 ◇中華帝国の祭天儀礼（妹尾 達彦） はじめに 一 宇宙論（コスモロジー）の変遷 1 哲学的宇宙論 2 天文学的宇宙論 二 帝国期の祭天儀礼 三 国民国家の形成と祭天儀礼の終焉 おわりに III ヨーロッパにおける国王祭祀と聖性 1．ヨーロッパにおける国王祭祀と聖性（渡辺 節夫） はじめに 一 総論 二 西欧中世の皇帝観と聖者崇拝 1 中世的皇帝観と王権 中世における皇帝とローマ教皇権 王の権威の上昇とシャルルマーニュ 王は王国内における皇帝である 2 カトリック的王の聖性 聖別と塗油 瘰癧治療と王の聖性 治癒儀礼と聖者崇拝