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出版社:共立出版
出版日:2000年03月05日頃
ISBN10:4320016556
ISBN13:9784320016552
販売価格:3,850円
可積分系は20世紀最後の20年あまりの間に、数学とその関連諸科学においてきわめて重要な位置を占めるにいたった概念であり、現在もなおその概念が拡張されて盛んに研究されている。本書はコマの運動方程式を通じて有限次元可積分系の理論、特にその幾何学的側面を紹介するという、きわめて特色のある本である。
あらゆる可積分系に共通の方法であるLax方程式の方法を、古典的なコマの運動方程式を材料にして、丁寧にかつわかりやすく解説している。その出発点は大学初級の線形代数でおなじみの、行列の固有値・固有ベクトル・固有方程式の概念であるが、それを用いてスペクトル曲線という代数曲線を導入し、因子・微分形式・テータ函数などの代数幾何学的な対象を巧妙に用いながら、運動の様子や相空間の幾何学を明らかにいく。また背景となる力学系のシンプレクティック幾何学についても説明している。
本文では、有名な3種類(Euler、Lagrange、Kowalevski)のコマを順に取り上げ、最後に、少し異質な場合として、やはり有名な戸田格子に触れている。また、本文では全体的な話の流れを見通しよく示すことに努め、技術的な詳細は付録として巻末に要領よくまとめられている。
[原著Michele Audin: SPINNING TOPS-A course on integrable systems(Cambridge University press、1996) ]
序章
1.完全可積分系
2.Arnold-Liouvilleの定理
3.方法序説
4.この本について
5.記号
I 固定点をもつ剛体
1.方程式
2.可積分性の問題
3.自由剛体とEuler-Poinsotの例
II 軸対称なコマ
1.軸対称なコマ入門
2.Lax対とその帰結
III Kowalevskiのコマ
1.Kowalevskiの方法
2.Lax対とスペクトル曲線
3.一般化されたコマのLax対とその応用
IV 自由剛体
1.Euler方程式とManakov方程式
2.3次元自由剛体
3.4次元剛体についての諸注意
V コンパクトでない等位集合〜戸田格子
1.微分方程式とスペクトル曲線
2.固有ベクトル写像〜n=2の場合
付録
1.Lie代数の双対空間上のPoisson構造
2.R-行列と「AKSの定理」
3.固有ベクトル写像と流れの線形化
4.複素曲線,実曲線,およびそれらのJacobi多様体
5.Prym多様体
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