ユダヤ教の精神構造　増補新装版

偉大なる預言者モーセに倣い，ラビに導かれて神の法を歩むーー聖書の時代から近現代に至るまで，離散と迫害のユダヤ民族史を支え続けたものは何か．ユダヤ教の法の精華ミシュナ，タルムードを中心に据え，その精神構造と思惟方法を究めようとする． はじめに 序　「我らのラビ・モーセ」に倣いて 　一　ユダヤ教研究への道のり 　ニ　本書の意図と構成 　三　古代ユダヤ教の概観 第一部　法の宗教の成立 第一章　ユダヤ教の正統性 　一　法華経の論理 　ニ　エウセビオスのキリスト論 　三　ラビ・ユダヤ教の論理 　四　ラビ・ユダヤ教の始原としてのモーセ 第二章　タルムードと自治社会 　一　制度知としてのタルムード 　ニ　タルムード制度知の担い手 　三　ユダヤ人社会の枠組 　四　ミシュナの世界 　五　多数決の意味 　六　最高意思決定機関の構造 　七　モーセの権威 第二部　トーラー精神発現の諸相 第三章　自由と戒律 　一　ユダヤ教の戒律 　ニ　神の実験としての出エジプト 　三　「頑なさ」と罪 　四　法はなぜ荒野で与えられたか 第四章　偶像崇拝との闘い 　一　正邪の見分け 　ニ　聖典解釈の方法 　三　なぜ偶像を作ったか 　四　それは偶像崇拝ではない 　五　わたしのまえに 　六　他の神々 　七　偶像崇拝の克服 第五章　神への愛 　一　恋愛詩と宗教ーー孔子と詩経 　ニ　聖書の雅歌とユダヤ教 　三　ユダヤ教の雅歌解釈 　四　神への愛 　五　隣人愛の行方 第六章　罪と赦し 　一　悔い改めの祈りと父祖の力 　ニ　ユダヤ教の礼拝と祈祷書 　三　平日の朝の礼拝における「悔悛」 　四　「悔い改めの十日間」と「スリーホート」の祈り 　五　父祖の徳と救済 　六　聖者廟へ 第七章　神秘の力 　一　未知の世界と盲目ということ 　ニ　科学的モデルと未知の解明 　三　創造的思考と無限なるもの 　四　神秘主義の位置 　五　無からの創造とその変容 　六　ブラツラフのラビ・ナハマンと寓話の世界 第三部　近代との相剋 　 第八章　自治の終焉 　一　近代への視点 　ニ　ユダヤ人自治社会の崩壊過程ーー内側からの脅威 　三　古典的ユダヤ人自治社会の社会構造 　四　法的自治の宗教的な基盤 　五　ラビ・ユダヤ教体制を脅かすもの 　六　自治の行方 第九章　聖書解釈の行方 　一　神的強制か自発的意志か 　ニ　近代化の衝撃とトーラーの権威の行方 　三　近代の挑戦ーー自発的意志の神格化 　四　自発的意志をめぐるユダヤ教の聖書解釈 　五　聖書解釈のめざすもの 第一〇章　聖書と現代 　一　価値観の多様性ということ 　ニ　聖典への視座 　三　認識能力とコンテクスト 　四　「学」と「思」の普遍妥当性にむけて 　五　識別の射程 補論　井筒俊彦とユダヤ教ーー哲学者マイモニデスをめぐって 　序　なぜマイモニデスなのか 　一　哲学者としてのマイモニデス 　ニ　律法学者マイモニデスと啓示法の哲学 　結論 おわりに 増補新装版のあとがき The Spirit of Law in Rabbinic Judaism [Revised Edition] Hiroshi ICHIKAWA