天馬空をゆく

横井金谷。終生一雲水として江戸時代後期の日本を自由奔放に駆け抜けた、実在のお坊さんである。生来の陽気さと要領のよさ、旺盛な好奇心から、僧侶としての学問はもちろん、剣術、浄瑠璃、博打、操舵術まできわめた。ふと湧き立つ旅ごころに誘われ、ついふらふらと足の向くまま気の向くまま、至るところで心のおもむくままに、愚行蛮行を繰り広げる。南画風の絵をよくし、与謝蕪村にも劣らないことから、別名「近江蕪村」。波瀾万丈の生涯を軽妙に綴った自伝『金谷上人御一代記』を神坂流に調製・再現したのが本書である。ユーモア時代小説の第一人者・神坂次郎の快筆が躍る、抱腹絶倒の金谷上人一代記。